執拗に愛されて、愛して
それから数週間後、本社転勤の話が出た。

転勤というか戻るだけなんだけど。

期間は1年7ヶ月ほどの支社勤務。

ようやく遠距離が終わる。

引き継ぎを慌てて行って、そのまま私の送別会だと部署の人が開いてくれる流れになった。

送別会に行く前に会社である男に声を掛ける。


『…はい』

「久しぶり」


そんなふうに話すと電話の奥で眠たそうに欠伸をしている。


『久しぶりじゃん、何か用?』


久しぶりだと言ってもかなり素っ気無い。


「あんたにいい報告してあげようと思って。」


雅の様子なんて気にする事無く私は話を続けた。

これでも私も浮かれてるの、ようやくあんたに会えるって。


『あ?何、酒でも送ってくれんの?』

「バカね、2週間後帰れそうなの。あんたの誕生日の日」


そう言うと電話先から中々声が帰ってこない。


「ちょっと、無視は流石に感じ悪いんじゃないの」

『…ああ、ごめん。聞いてるよ』


珍しくおとなしいから調子が狂う。

喜んではくれなくても『やっとか』とかそんな軽口が返ってくると思ってた。


「…嬉しいでしょ?」


いつもなら自信たっぷりに言う言葉も今日のこの言葉は私の嬉しいって言ってよという期待が込められていた。

自分は寂しかったとか早く会いたいとかそんな言葉言えないのに、雅にはいつも求めてしまう。

本当一番の自分勝手で我儘で自己中なのは私だと思う。

私の勝手で長いこと待たせておいて。
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