執拗に愛されて、愛して

我慢

久しぶりに少し重たいドアを恐る恐る開ける。

コソッと中を覗き込むとバーカウンター内にいる玲くんと目があった。

私が笑顔で手を振ると玲くんも笑顔で返してくれる。


「夏帆ちゃん!」

「玲くん!」


嬉しくてすぐにカウンターの席の方まで向かう。


「久しぶり!会いたかった!」

「私も会いたかったー!」


そう言いながら出されたお水を受け取ると後ろから首を腕で締められる。


「俺の時と違って随分嬉しそうな。浮気?」


その声の主は雅だ。

カウンターの中に居なかったからどこにと思えばお客さんとダーツを投げて遊んでいたらしい。

そしてなぜかその声はほんの少し不機嫌。


「帰ってくるその日に寝坊なんかされちゃね」


そう生意気に返して鼻で笑うと、後ろから覗き込まれてキスされる。


「んー!」


捕まえられている腕をバシバシと強く叩く。


「雅、仕事中。」

「生意気言う口に分からせただけ」


そう言いながらカウンターの中に入っていく。

他のお客さんもいるのに何が分からせたなのか。

本当信じられない。

溜息を吐いて「オレンジカクテル」というと雅は面倒くさそうな顔をする。


「あー。気分いいから奢ってあげようと思ったのに。玲くん雅のは今日自腹」

「俺も何か作りたい気分だったんだよな」


そう言いながら作り始めるんだから、本当調子良い男。
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