執拗に愛されて、愛して

幸福

「黒崎さーん」


そう呼ばれているのは雅、ではなくて私夏帆です。


「はーい」


最初こそ慣れなかったこの名前だけど今では随分自然に反応できるようになった。

あの後すぐに結婚指輪を買いに行って届いたタイミングで籍を入れた。

左手の薬指にはまたお揃いが増えている。

うちの両親はそれはそれは大喜びだった。

それも相手が雅なのもあって。

バーには変わらず通っている。


「夏帆ちゃん、お疲れ様」


と相変わらず玲くんが出迎えてくれる。


「玲くん、雅は?」

「お客さんのお見送り行った、もう帰ってくると思うよ」


玲くんの話を聞きながらいつものカウンター席に座る。
< 214 / 222 >

この作品をシェア

pagetop