執拗に愛されて、愛して
カウンターに入りながらそんな質問を飛ばして、煙草に火を付ける。


「いや、よくこんな綺麗で可愛い子雅の奥さんに来てくれたよねーって思って。雅には高嶺の花じゃない?」

「学生時代付き合ってたんだからそんなこともねぇだろ」


そう言いながら煙草を蒸す。


「そう思えば、玲くん悪かったよね。雅の嫉妬心に火付けるためにわざと私に告白とかしてさ、落ちてたらどうしてたのさ」

「その時は責任取るよ。本当に良いなと思ってたし」

「はは、胡散くさ」


私がそう言って笑うと玲くんも笑っている。

絶対良いななんて思ってなかったでしょうに。

玲くんの事理解しているわけじゃないけどこれだけはわかる。

きっと私なんか好きになる人じゃない。

それになんとなく玲くんと私は似ているなと思う。

きっとこの人も一から恋に落ちて駆け引きして関係性作って恋愛するのが面倒なタイプだろうなって思うから。

私達が付き合ってもきっと上手く行かないと思う。

その気持ちは多分お互い同じで、だから玲くんとは良い距離感で付き合える。

何も知らなくても普通に話すのに問題ない相手。

それが私にとって玲くんだった。


「でも俺も本当うれしいよ。雅もお客さんに手出さなくなったし」

「まだ根に持ってんの。夏帆と会ってからやめたじゃん」

「俺はその前までの話をしてるんだよ。本当修羅場で壊されたものとか考えると雅に弁償してほしいくらいだけどね。クビにしてるよ、他なら」

「何その楽しそうな話」


修羅場とか、壊されたとか激しいワードに興味が湧く。


「聞かなくていいから」


雅の気まずそうな表情に思わず口角が上がる。
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