執拗に愛されて、愛して
「あーあ、こんなに幸せになれるなんて思わなかった。仕事に生きて仕事にやりがいを感じて将来おばあちゃんになったらばかみたいに溜めた貯金で遊んで良い所で生涯を終えるんだって思ってたから。別の幸せなんて考えてなかった。」


そう言うと先程まで楽しそうに笑っていた玲くんが少し驚いた顔をした後、優しく微笑んだ。


「俺も、2人が幸せそうで嬉しいよ。」


玲くんの表情に私も笑い返すと、目の前のお酒に口をつける。

結婚なんてって言ってたのはその幸せを知らなかったから、

いざしてみたらそんなに悪くないなんて。

ふと雅を見れば、楽しそうに笑っている。

私の仕事を応援してくれている様に私もあんたの仕事ぶりが好きだから来るのやめられない。

なんて絶対言ってあげないけど。

しばらくすると、今度は玲くんと入れ違いで前に雅が来る。


「はあ、表情筋疲れた」


ある意味プロだけどその裏側は相変わらずかなりクズ。

さっきまであんなにニコニコしてたくせに。


「あんな美人と話せてむしろあんたが感謝しなさいよ」

「全然嫁から言われるセリフじゃなさすぎてウケる」


なんて真顔で言っている。

ウケるっていうくらいなんだからせめて笑いなさいよ

そう言いたい気持ちを飲み込んで溜息を吐く。


「やっぱお前が一番楽。それなりに癒やされるし」

「そうね、私もあんたの顔にだけは癒やされる」

「眺め放題で良かったな。幸せな奴」


そう言って笑いながら、グラスに水を入れている。


「飲まないの?」

「今日はいいや、酒飲む気分じゃない。」

「あんたにそんな気分の日あったの?」

「俺の中ではもう昔みたいにバカみたいに飲む年齢はとっくに終わってんだよ」


そう言いながら煙草に火を付ける。
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