執拗に愛されて、愛して
「それなら煙草もやめなさいよ、あんたに早死にしてほしくないし」

「…禁煙なあ」


全然乗り気じゃ無さそう。

これはやめないな、きっと。

ふと前から後頭部に手が回ってきて驚いているとそのまま唇を奪われる。

お酒と煙草の苦さを感じる。

てかこいつまた人前で。


「夏帆が孕んだ時は考えようかな」


なんて言って笑っている。

孕んだ時って…こいつなんてことを…。


「本当…、あんた場所と発言考えなさいよ」

「そんな引いた目で見なくても良くね?」


本当馬鹿みたい。その時が来るならやめてくれないと確かに困るけど…!


「うわ、それめっちゃいいな。仕事行かせずに閉じ込めておけんの。産む?」

「倫理観が欠落してる事思い出した。バカねあんた」


もはや呆れるしかない。

そんな理由で子どもを作って良いはずがない。


「子ども、うるせぇし扱い方わかんねぇし汚すし、全然好きじゃねぇけど」

「…あんた絶対子ども作んないほうが良いわよ。不安だわ」

「でも、お前との子なら絶対可愛いだろうなって思う。」


ふと優しい表情して言うから、本気なのかって思ってしまいそうになる。

今自分でどんな顔してるかわかってるのかしら。

鏡で見せてあげたい。


「そんな夢もあるかなって思うよ、前までは考えつかなかったけど」

「…そうね」

「あとシンプルに生でヤッて中に出してみたい」

「もう全部台無しだから死んで。死ななきゃバカは治らないんだった」


発言がとことん最低で少しでも感動した時間を返してほしいと思う。

雅は私の発言に楽しそうに笑っている。

本当倫理観もないクズなのに、どうして好きになったのか。

よくわからないけど、でもその笑う表情は愛しいなって思ってしまう。

きっと私はどんなに呆れてもがっかりしても好きで囚われ続ける。

離れたくても離してなんかくれないだろうけど。

この男に執拗に愛されて、私もきっと愛し続ける。






End.
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