執拗に愛されて、愛して
「ていうか、俺あの後牽制されちゃった。夏帆にちょっかい出したら玲でも殺すって」


笑いながら話す玲くんだけど、あまり信じられなかった。

基本的に嘘を吐かないと知ってても雅がそんな事を言いそうに思わない。


「えー、あの雅が?」

「意外と独占欲強いよ、嫉妬も結構してるし」


学生時代も嫉妬で何度か喧嘩はあったけど子供ならではのそれだった。

幼かったからこそ出来たというか。

今はそんな素振り全く無いけどな。

むしろこの間ナンパされたら助けてくれるどころが「気強いからやめときな、怖いよ」なんて男側に助言してたし。

本当なんだこの男。

思い出したらムカついてきた。


「雅ほどわかりやすい奴も居ないと思うけど」


ふと雅に視線を移すと、雅もこっちを見て目が合う。

ヒラヒラと手を振ると、雅は女性客にごめんとジェスチャーをしてこっちに寄ってくる。


「おい、声掛けろよ。無駄にニコニコした時間続いただろーが」

「はあ?仕事でしょ!てかなんて声掛けたらいいのよ」

「そこは彼女らしく可愛く「来ちゃった」とでも言えばいいんだよ」


その来ちゃったにはハートでも付きそうな勢いだ。

そんなの私に言えるはずがない。


「バカじゃないの!夢見てんじゃないわよ」


私がそんな可愛らしい女ではないことは雅がよくわかっているはずだ。
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