続きは甘く優しいキスで
「そんな……。自分の生活をがらりと変えてまで……。さおりさんに今の連絡先や住所を聞いて、電話するとか部屋を訪ねるとかは考えなかったの?」
彼は私の疑問にあっさりと答えた。
「電話は出ないだろうと思ったし、アパートだって直接訪ねたところで会ってはもらえないだろうと思った。きっとそうだったんじゃない?」
私は言葉に詰まった。確かに、と思う。拓真の連絡先はまだ携帯に残ってはいるが、電話がかかってきたとしても出なかっただろう。彼が部屋を訪ねて来たとしても会わなかったはずだ。だって、彼はあの時のことを怒っていると思っていたから。
「だからこの会社に来た。碧ちゃんに会えるように。こんなのはストーカーみたいだっていう自覚はあるよ。俺、自分では淡白な方だと思っていたんだけど、君に関してはそうじゃないみたいだ」
拓真は苦笑した。
「話がそれたね。俺、碧ちゃんが今太田さんと付き合っていることは知っていたよ。君には話していなかったけど、実は歓迎会の時に、太田さんの方から言ってきたんだよ。ここだけの話って言ってね。どうしてわざわざ俺に、と思ったけどね。俺と君の関係を知っていたわけではないようだったから、俺が独身と分かって牽制をかけてきたのかな。とにかくそれを聞いた俺は、君が幸せならこのまま身を引こうと思っていた。だけど俺には、君が幸せそうには見えなかった。だからもしもまだ、俺への気持ちが残っているのなら、太田さんと別れて俺を選んでほしい。あの頃以上に君を大切にする。もう一度俺と付き合ってくれないか」
「私……」
声が喉に張り付く。本当はすぐにでも頷きたい。だけど、私はまだ太田の彼女なのだという現実がそれを止めた。
彼は私の疑問にあっさりと答えた。
「電話は出ないだろうと思ったし、アパートだって直接訪ねたところで会ってはもらえないだろうと思った。きっとそうだったんじゃない?」
私は言葉に詰まった。確かに、と思う。拓真の連絡先はまだ携帯に残ってはいるが、電話がかかってきたとしても出なかっただろう。彼が部屋を訪ねて来たとしても会わなかったはずだ。だって、彼はあの時のことを怒っていると思っていたから。
「だからこの会社に来た。碧ちゃんに会えるように。こんなのはストーカーみたいだっていう自覚はあるよ。俺、自分では淡白な方だと思っていたんだけど、君に関してはそうじゃないみたいだ」
拓真は苦笑した。
「話がそれたね。俺、碧ちゃんが今太田さんと付き合っていることは知っていたよ。君には話していなかったけど、実は歓迎会の時に、太田さんの方から言ってきたんだよ。ここだけの話って言ってね。どうしてわざわざ俺に、と思ったけどね。俺と君の関係を知っていたわけではないようだったから、俺が独身と分かって牽制をかけてきたのかな。とにかくそれを聞いた俺は、君が幸せならこのまま身を引こうと思っていた。だけど俺には、君が幸せそうには見えなかった。だからもしもまだ、俺への気持ちが残っているのなら、太田さんと別れて俺を選んでほしい。あの頃以上に君を大切にする。もう一度俺と付き合ってくれないか」
「私……」
声が喉に張り付く。本当はすぐにでも頷きたい。だけど、私はまだ太田の彼女なのだという現実がそれを止めた。