続きは甘く優しいキスで
言葉を探して視線をさ迷わせている私に、拓真は真摯な目を向ける。

「今の気持ちを正直に話してくれないか。そしてもし答えがノーなら、はっきりと振ってほしい。それで今度こそきっぱりと諦める。君を追いかけるようなことはしないから」

彼の言葉に胸の奥にこみ上げるものを感じる。私はかすれた声で話し出した。

「あんな風に拓真君から逃げてしまったこと、後悔してた。ほんとはね、あの後時間がたってしまったけど、電話したの。正直に話して謝ろう、あなたを好きな気持ちは変わらないことを伝えようって思った。でも、その時電話はつながらなかった。だから勇気を出して部屋まで行った。だけどもう空っぽだった。春だったから、あぁ、就職でどこかに引っ越したんだなって思った。自業自得だって悔やみながら、拓真君のこと、早く忘れなきゃと思い続けた。やっと次の恋を探そうって思えるようになって、その時私を好きだと言ってくれたのが太田さんだったの。私もう二十六だし、いつまでも昔のことを引きずってちゃいけない、前に進まなきゃ、って思ってたから、彼と付き合い出した。だけど色んなことがあって、もう別れたいって思っているの。そのことは、彼にはまだ伝えていない。だからまだ、うんとは言えなくて……」

私は膝の上で両手を握り、おずおずと顔を上げた。

「もう少しだけ、私のことを待っていてもらえるでしょうか」

「それはイエスってこと?」

拓真の問いに私は頷く。

「分かった、待つよ」

彼のその言葉が私を安心感で包む。太田に向き合う勇気をもらえたと思った。

「ありがとう」

そう言って瞬きした途端、涙がこぼれる。

拓真の手が私の頬に伸びた。その指先で伝い落ちる涙をそっと拭い、彼は言った。

「好きだよ」

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