続きは甘く優しいキスで
田中の言葉に、拓真は迷うことなく頷いた。

「私はまったく問題ありません。支社の方とこういう機会を持つのはいいことだと思いますし」

拓真の言葉を受けて私も頷いた。

「私も大丈夫です。確かに北川さんの言う通り、こういうことでもないと、支社の皆さんとの交流の機会がありませんから」

「そうか。それじゃあ、そういうことで先方にも伝えておくよ。当日は二人ともよろしくね」

「はい」

「あと、これなんだけど。向こうに行ったら、こういう点を特に教えてきてほしいんだよね。簡単にチェックリストと説明文的なやつ作っておいたから、持って行ってくれる?」

「分かりました。なるほど……。結構ありますね」

苦笑する私に、田中もまた苦笑いを浮かべた。

「だよね。これを全部支社でしっかりとやってきてくれれば、こっちの仕事もスムーズに捗るんだけどねぇ。……悪い、先に戻るよ。部長に呼ばれてたんだ」

「はい、どうぞ」

田中がバタバタと会議室を出て行ったのを見送って、私は椅子を戻して照明を消した。

「私たちも戻りましょうか」

ドアに手をかけた時、拓真がぼそっと言った。

「碧ちゃんとの出張、仕事だけど楽しみだなんて言うのは不謹慎かな」

そう言われて嬉しかったが、私はあえて真面目な顔をする。

「仕事で行くんですよ」

拓真はくすっと笑う。

「もちろん分かってるよ。ところでさ」

拓真が身をかがめ、私の顔をのぞき込んだ。
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