続きは甘く優しいキスで
目的の駅に着き、改札を出た私たちは、そこで私たちに向かって手を振る男性に気がついた。

じっと目を凝らして見て、私は驚いた。

「え……まさか支社長?」

私は拓真を促してその男性の傍まで急いだ。

「やぁ、笹本さん、久しぶりだね。来てくれてありがとう」

「ご無沙汰しています。というか、支社長直々に、わざわざ迎えに来てくださったんですか?すみません、お手数をおかけしました」

「いやいや、無理を言って来てもらったんだ。これくらいは当然だよ。驚かせたくて事前に言ってなかったんだけど、時間通りの到着で良かったよ」

時田はにこにこと言い、それから私の隣に立つ拓真に顔を向けた。

「彼が北川さん?初めまして、時田です。よろしく」

「初めまして。北川です。今回はよろしくお願いします」

「こちらこそ。さて、車で来てるんだ。駐車場まで行こう」

「はい、よろしくお願いします」

私たちは頷き、時田の後を着いていく。助手席には私が、後部座席には拓真が乗る。

「いやぁ、しかし、笹本さんの顔を見るのは久しぶりだよね。笹本さんと一緒に働いたのは丸二年くらいか」

「そうですね。当時は本当にお世話になりました」

私が入社した時、時田は経理課長だった。仕事では厳しいけれど物わかりの悪い上司ではなく、仕事を離れればいいおじさんだったから、彼を慕う社員たちも多かった。私もその一人で、時田が支社に異動すると聞いた時は寂しく思ったものだ。

「ところであの頃の経理のメンバーは、皆んな変わってないか?笹本さんの同期の太田君も元気にやってるのかな?」

< 117 / 222 >

この作品をシェア

pagetop