続きは甘く優しいキスで
「俺の所に戻ってきてくれるって言ってもらえて、嬉しくて仕方ないんだ。これが嘘じゃないことを信じられるように、一緒にいたい」

拓真の瞳が潤んで見えてどきりとする。

「でも、一人の方がゆっくり眠れるんじゃ……」

拓真の手に力がこもる。

「一人より二人の方が、不安な気持ちも和らぐと思うよ。それに、きっとあったかい気分で眠れる」

最後の一言につい笑い声がもれた。

「甘えさせ上手な所、変わってないのね」

「そうかな」

拓真はくすっと笑い、それから思い出したように訊ねた。

「着替えるんだったね」

「うん。行って来るね」

「行ってらっしゃい。でもまた冷えてしまったかな。もう一回風呂であったまる?」

心配そうな拓真に私は首を横に振る。

「大丈夫。拓真君が一緒に眠ってくれるんなら、あったかいはずだから」

言ってから急に恥ずかしくなり、私は急いで拓真の手から逃れた。

「また後で」

私はそそくさと拓真の部屋を出て、自分の部屋に戻った。それからまず、梨都子に連絡を入れる。明日の夜泊めてもらいたい、併せて相談したいことがあると、メッセージを入れた。

パジャマに着替え終えたタイミングで、梨都子から了解したとの返事が返ってきた。

『リッコで落ち合いましょ』

私はほっとして、携帯を旅行用カバンの中に仕舞いこんだ。今夜はもう誰からも連絡など入らないはずだし、携帯を手元に置いておきたくない気分だった。

念のためにと持ってきていたカーディガンを羽織る。これなら仮に廊下で誰かとすれ違うことがあっても、さほど恥ずかしくはない。貴重品を入れたバッグだけ持ち、私は拓真の部屋の前に戻った。ノックをするとすぐに彼が顔を出す。
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