続きは甘く優しいキスで
「それで?二人ともウーロン茶でいいのかな?」

はっとして頷きながら見上げた池上は、にやにやしていた。

「仲いいねぇ」

「ふ、普通ですよ、普通。とにかく、飲み物はそれでお願いします」

照れ隠しに早口で言う私に、池上は愉快そうに笑った。

「オッケー」

戻って行く池上の背中を見ながら私は苦笑した。

「からかわれちゃった」

「仲のいい恋人同士に見えてるんだって思うと、俺は嬉しいよ。さてと、冷めないうちに頂こうか」

拓真は笑ってそう言うと、料理を小皿に取り分け始めた。

「はい、どうぞ」

目の前に料理を並べてくれる彼に、私は申し訳ない顔を向ける。

「ごめんなさい。気が利かなくて……」

「これくらい、なんてことないよ。ほら、あったかいうちに食べよう」

「うん」

拓真の傍で大口を開けるのは恥ずかしいと思いながらも、お腹がすいていた私はぱくりとパスタを口に入れる。懐かしいような見た目と味のナポリタンスパゲッティだ。

「おいしい……」

しみじみと言ってほうっとため息をつく私を、拓真はにこにこしながら見ている。

「あとでデザートも頼もうか」

「うん、いいね」

私もにっこりと笑い返す。こうやって拓真と他愛のない会話をしていると、自分が今置かれている状況をうっかり忘れてしまいそうになる。できることなら、このままこの問題が自然に解決されればいいのにと、現実逃避気味なことを考えてしまい、慌ててその考えを振り払う。

「碧ちゃん、大丈夫?」

私の表情の陰りに気づき、拓真は眉根を寄せる。

彼の心配を払うように私は明るい笑顔を見せた。
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