続きは甘く優しいキスで
「分かりました。ここはお言葉に甘えさせてもらおうかな。――じゃあ、行こうか」

「うん。梨都子さん、帰りますよ」

声をかけると、梨都子はご機嫌な様子で立ち上がった。そのまま私の腕に自分の腕を絡ませる。ふらつく身体を支えたいのなら、小柄な私よりしっかりした体躯の清水の方が安定するはずだ。それなのにあえて私に寄りかかるところは、夫である池上の気持ちを考えてのことなのだろう。酔ってはいても、そういうところはしっかりしているんだな、と感心する。

二人とも、お互いを大切に思ってるのが分かるもんね――。

羨ましく思いながら、私は梨都子を抱えるようにしてタクシーまで連れて行った。後部座席に梨都子を先に乗せて、自分はその隣に座る。助手席には清水が乗った。

まずは梨都子を送り届けるべく、清水の案内でタクシーは無事に目的地へとたどり着く。

「ここですか?」

「うん、この一軒家。ドライバーさん、すみませんが、少しだけ待っててもらえますか?」

清水はそう告げて、車の外に出た。

「梨都子さん、お家に着きましたよ。降りましょう」

私は声をかけながら彼女の腕を取り、車の外に引っ張り出す。

「玄関まで一緒に行きますね」

「二人とも悪いわねぇ。だけどもうダイジョブよ」

眠たそうではあるが、思いの外しっかりした声で梨都子は言う。

「ほんとに?鍵、自分でちゃんと開けられます?」

「ダイジョブダイジョブ。史也君、碧ちゃんのこと、ちゃんと送ってね。よろしく」

「了解です」

清水は笑いながら片手を上げてみせた。

「よし。梨都子さんも大丈夫みたいだし、俺らも帰るとするか」

「そうですね。梨都子さん、またね。おやすみなさい」

「ありがとね。二人ともおやすみ」
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