続きは甘く優しいキスで
「なんでもないよ。あ、このサラダも美味しいね。アスパラガスと生ハムなのね。自分でも作れるかしら。ね、拓真君、ローストビーフかスペアリブも食べない?」

拓真が苦笑する。

「そんなに食べられるの?」

「大丈夫だよ。だって、拓真君も食べるでしょ?後で梨都子さんも来るし」

「よし、それなら追加しようか。あ、その前に、碧ちゃん。ソースがついてる」

「え、どこ?」

私が自分の指を伸ばすより早く、拓真の指が私の口元に伸びた。

そっと撫でられてどきっとする。

「た、拓真君……」

「ん、綺麗になった」

動揺している私の前で、彼はソースを拭い取った指先をなめる。

「き、綺麗になったって、言ってくれれば自分でやれたよ……。そ、それに、そんなのわざわざ舐めなくても……」

どもるように言う私に拓真は不思議そうな顔をし、それからくくっと笑う。

「味見したくて」

「あ、味見って……。たくさんあるんだから、こっちを食べればいいでしょ」

私は恥ずかしくなって拓真から目をそらし、次のスパゲッティを口に入れるためにフォークを動かす。

「ごめんごめん。なんだか碧ちゃんに触れ足りなくて。そんなに怒らないで」

拓真は悪びれることなく笑っている。

「べ、別に怒ってるわけじゃないから」

「本当に?」

「本当だってば」

傍からは、恋人同士がいちゃついているようにしか見えないだろう。それを照れ臭く思いながらサラダを口に入れた時、ドアベルの音が聞こえた。

待ち人が来たかと目をやった先には、梨都子がいた。彼女は池上と短く会話を交わした後、すぐに私に気がついて、にこやかな笑顔を浮かべてやって来た。

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