続きは甘く優しいキスで
「泊めてだなんて言ってきたのもそうだけど、そんなにかしこまっちゃって、一体何があったの?こっちまで緊張してくるんだけど」

そう言いながら、梨都子は背筋を伸ばして座り直し、池上と顔を見合わせる。

私は緊張しつつおもむろに口を開いた。

「泊めてほしいって言ったのには事情があって……」

陽気な声が近づいてきたのは、話し出そうとした時だった。清水だった。

「おっ、梨都子さんと碧ちゃんの二人が揃ってる。なんだ、池上さんもここにいたの?カウンターの中、バイト君しかいなかったから、どうしたのかと思ったよ。ん……?」

清水は私たちの視線が自分に集中したことで、はたと動きを止めた。私たちの様子に困惑顔をする。

「もしかして、お邪魔だった?」

私は首を横に振った。

「いえ、そんなことないです。ちょっと梨都子さんたちにお願い事があって、今その話をしていたところで……」

「お願い事?」

改めて顔ぶれを確かめるように私たちの顔をぐるりと見て、清水の目が拓真の所で止まった。

「こんばんわ。確か、北川さん、でしたよね。碧ちゃんの同僚の。これって、どういう面子?あ、その前に、俺のこと覚えてます?」

「えぇ、もちろんです。先日はどうも」

拓真は笑みを浮かべて清水に挨拶した後、私を気遣うように言った。

「碧ちゃん、ひとまず俺は、清水さんと池上さんと一緒に向こうに行ってようか?女性同士の方が話しやすいこともあるだろう?」

私は首を振った。

「拓真君もここにいて。それにね、清水さんは私が気づくよりも早く、太田さんが私を束縛しているんじゃないかって、心配してくれた人なんだよ」

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