続きは甘く優しいキスで
意外なことを聞いたとでも言うように、清水の目が見開かれた。

「それで偶然会社で再会して、付き合い出したってこと?」

私は首を縦に振った。

「まぁ、そういうことです」

清水が首を傾げた。

「へぇ、あの彼と別れるの思ったよりも早かったな。いや、別に悪いって意味じゃないよ。俺、実は心配だったから、よかったな、って」

「よかったな、ってどういう意味よ?」

清水の言葉に梨都子がぴくりと片眉を上げる。

「碧ちゃんの話そうとしてる事情、何か気づいてたってこと?」

「うん、まぁ、気づくというか」

清水は腕を組んで私を見た。

「さっき、なんか言ってたよね。束縛がどうとかって」

清水の眉根がきゅっと寄せられた。彼は一度太田に会っている。その時の太田の様子や、その前にタクシーの中で私と交わした会話の内容などを思い出しているのかもしれない。清水はその時の会話の中で、私に対する太田の行動を「束縛気味に見えてしまう」と表現していたのだった。

「彼と別れた理由はやっぱりそれか?」

私は清水の問いに頷くと、テーブルの上に目を落とした。ひと呼吸ついてから、昨晩拓真に話したと同じことを二人に話して聞かせる。この話をするのは苦しいけれど、今は拓真が傍にいてくれるから大丈夫だと、時折つかえそうになる声を励ました。

ようやくすべてを話し終えて、二人の反応が怖くて緊張する。組んでいた手指にいつの間にか力が入っていたらしく、気がつけば色を失っていた。
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