続きは甘く優しいキスで

17.背中を押されて

「なるほどねぇ……」

梨都子はふうっと深いため息を吐き出した。

「なんだか背中を押したような感じになってたから、ちょっと責任を感じるわ……」

清水も梨都子の隣で大きく頷く。

「俺も同様だよ」

「そんな、責任なんて……」

「とにかく。そういうことなら、夕べも返事した通りうちは全然構わないわ。それにしても」

梨都子は腕を組んだ。

「その暴力的なことっていうのは、いわゆるDV的な?」

「私にはそう思えます。つい最近には首を絞められて……」

私は自分の首に触れる。

「ここの照明だと分かりにくいけど、ここにはまだ痕が残ってます」

梨都子の綺麗な眉がぎゅっと寄せられた。

「いったいどういう理由で、そんなことされなきゃならないわけ?」

「それは……」

話そうとしたが、声が喉に張り付いた。あの時のことが思い出されて、ぶるっと身震いする。あの日からまだ数日しかたっておらず、痕だけではなく、絞められた時の感触も感覚も、はっきりと残っている。殺されるとまでは思わなかったけれど、あんな経験は初めてだったし、自分がそんなことをされるなんて思ったこともなかった。

私を落ち着かせようとしてか、拓真がそっと手を握ってくれる。

梨都子もまた私の怯えた様子に気づき、慌てて謝る。

「ごめん。思い出したくないことよね。言わなくていいから」

「いえ、大丈夫です……」

私は温んだウーロン茶で唇を湿らせる。

「別れたいということを言ったんです。ずっと嫌だと思っていたことや、愛されてるとは思えなかったってことも、全部。それに自分では隠していたつもりだったけど、拓真君への気持ちは知られていたんだと思う。それで逆上させてしまったんじゃないかと思います……」
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