続きは甘く優しいキスで
「碧ちゃんが今付き合ってる男は、恐らくその男と同一人物だ」

そう言って清水は真顔で私を見た。

「あの時の俺の感覚は間違ってなかったんだな。とにかく、相手はそういうやつだ。だから別れ話の決着を待たずに離れることを決めたのなら、それは正しい選択だと思うよ」

清水は優しい目を私に向けた。それから今度は拓真に向き直る。

「その男、執着心もなかなか強いみたいですけど、北川さんはこの後のこと、何か考えてます?相手が諦めてくれれば問題ないでしょうけど、どうもそういうタイプには思えないし。碧ちゃんと付き合い出したってだけじゃ、この子のこと守れないでしょ」

拓真は腕を組み、考え深い顔で頷く。

「確かにそれはそうですね。彼女も心配している通り、今の環境では相手に絶対に会わない保証はないですから……。ひとまず部屋は移ろうということで、今回池上さんにお願いすることになったのは対策の一つなんですが、問題は会社ですよね。ただ、今すぐというわけにはいきませんけど、それについては少し考えていることがあるんです。一つ心配なことがあるとすれば、碧ちゃんがうんと言ってくれるかどうか、ですかね」

会社でのこと――?

私は拓真を怪訝な顔で見た。

昨夜は「方法を考えよう」と言ってくれただけだった。その先のことまでは話してくれなかったが、その時にはもう何らかの策を思いついていたのだろうか。

「詳しいことは今聞きませんけど、碧ちゃんって、意外に頑固な所がありますからね。それはその時にでも説得するということで、頑張ってください」

清水は苦笑しつつ言いながら、私を見、それから拓真に向き直った。
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