続きは甘く優しいキスで
梨都子は目元を緩めながら私を見つめる。

「それで、どうする?」

「どうするって……」

私は諦めて深々と息をはいた。

「だって選択肢、一つしかないじゃないですか」

ちらと拓真に目をやれば、その表情は「自分の所に来てほしい」と言っていた。

「……拓真君、お邪魔してもいいでしょうか」

そう言う私に彼はほっとした顔を見せ、嬉しそうに頷いた。

「もちろんだよ」

「よし。この話はこれで決まりね」

梨都子は私と拓真の間で話が成り立ったことを見て取ると、この件を締めるように両手をパンと打ち鳴らした。

「北川さん、碧ちゃんのこと、よろしくお願いしますね」

梨都子の言葉に拓真は力強く頷いた。

「はい」

その横顔に安心感を覚えながらも、もう一度念を押したくなる。

「本当にいいの?居候させてもらっちゃって……」

拓真は呆れたようにため息をつき、苦笑を浮かべた。

「まだそんなこと言ってる。うちに来ていいって、最初からそう言ってたはずだよ?」

「そうだったけど、やっぱりそこは。いくらつき合い出したって言っても、けじめみたいなものが必要かなって思ったから……」

「碧ちゃんにはやっぱり少し、いい加減さが足りないね」

拓真は冗談めかしてそんなことを言った。

こうして結局、彼の部屋への私の居候が決まってしまった。なんとなくそういう流れに持って行かれてしまった気もするが、かと言ってホテルが見つからなかった場合、やっぱり自分の部屋へ戻って一人でいるというのも心細く恐ろしい。だからもう反論も抵抗もしないことにする。安心した、嬉しいという気持ちを素直に彼に伝えるべく礼を口にした。

「拓真君、ありがとう。当分の間、よろしくお願いします」

「俺こそよろしくね」

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