続きは甘く優しいキスで
梨都子の声が割り込んできた。

「お話中、お邪魔してごめんなさいね」

からかうように言われて私は真っ赤になった。

梨都子はふふっと笑うと私たちの顔を見回した。

「明日、ドライブがてら、みんなで隣県のモールにでも行かない?碧ちゃん、当面必要なものなんかもあるでしょう?買いに行きましょうよ。気晴らしにもなると思うしさ。どう?」

心惹かれる誘いだったが、私は皆んなの表情を伺いながら言った。

「もし私に気を遣って言ってくれているのなら、大丈夫ですよ?第一皆んな忙しいでしょう?それに、わざわざ遠出までしなくても……」

その先の言葉を梨都子は遮る。

「そんなこと言わないで、たまには外で遊ぼうよ。途中で観光っぽいことをしたりね。北川さん、いいでしょ?」

「もちろんです。碧ちゃん、せっかくこう言ってもらってるんだ。気分転換に行ってみない?俺はいくらでも付き合うよ」

「ほら、彼もそう言っているんだから行こうよ。史也君は用事ないよね?」

「確かに別に何もないけどさ……。俺に運転させるつもりでしょ」

苦笑いを浮かべる清水に、梨都子は陽気に笑って答えた。

「あはは、分かった?」

「まあ、いいけど」

「じゃ、そういうことで決まりね!明日、ここの前で十時に待ち合わせってことでいいかな。北川さん、碧ちゃんのこと、よろしくお願いします。何かあったら、いつでも言ってちょうだいね。私の連絡先は碧ちゃんが知ってるから」

梨都子のうきうきした気持ちが伝染したのか、私も翌日の約束が楽しみになってきた。これから拓真の部屋に行くのだという緊張を、しばし忘れることができたのはそのおかげだ。

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