続きは甘く優しいキスで
拓真が言ったことに、特に深い意味はないのだろう。それでも、このお茶を飲む度に私のことを思い出してくれたのかしら、などと想像するとくすぐったくも嬉しい気持ちになる。

「こっちに座って。冷めないうちに飲もう」

「うん。頂きます」

私はおずおずと拓真の言葉に頷いて、彼が座るソファにそっと腰を下ろした。

微妙に間を空けて座る私に、拓真は苦笑している。しかし、それについては触れぬままティーカップを手に取った。

「このお茶を口にする度に、碧ちゃんのことを思い出したりしてた。二度と会えないだろうと思いながらも、どんな些細なことでもいいから君と繋がっていたかったんだろうな。そう考えると、俺も君に執着していた、いや、執着しているんだと思う。だからあの人のこと、あんまり言えないと思う部分もあるんだ」

拓真は自嘲気味に笑っている。

「でも拓真君は、私を傷つけたりしないもの」

「当たり前だよ。好きな人を大切にしたいと思いはしても、傷つけようだなんて思うわけがない」

私はティーカップを両手で包むように持ち、中のお茶に目を落とした。

「実はさっきね、拓真君が今言ったようなことを私も思ってた。これを飲んでる時なんかに、私のことを思い出してくれていたのかな、なんて、勝手に嬉しくなったりしてたんだ。あはは」

自分で言っていて恥ずかしくなり、私はそれをごまかすように笑った。

拓真の表情が嬉しそうに和らぐ。

「同じようなことを思っていたんだね。さて……」

彼はお茶を飲み干して立ち上がった。

「俺も風呂に入って来る。碧ちゃんは自由にしてて。眠くなったら、そのドアの向こうが寝室だから俺のベッド使って」

「えっ。そんなわけには……」

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