続きは甘く優しいキスで
うろたえる私に拓真は微笑む。

「俺はここで寝るから、遠慮せずに一人で手足を伸ばしてゆっくり休んで。疲れてるだろ」

「でも……」

まだ言葉を続けようとする私にその隙を与えまいとするかのように、拓真はリビングのドアを開けた。

「飲み終えたカップは、そのままにしておいていいからね」

引き留める間もなく彼はそう言って、するりとドアの向こうに行ってしまった。

「行っちゃった……」

彼の背中を見送ってから、私は元通りソファに座り直して考えた。

当面ここに置いてもらう理由を考えると、部屋の主のベッドを占領するわけにはいかない。よく見れば、今座っているソファは私が寝るにはちょうど良い大きさだ。スプリングもなかなかいい。拓真が戻って来たら、私はここで寝ると伝えよう。

そう決めてテレビをつけてぼんやりと画面を眺めていると、入浴を終えた拓真が戻って来た。まだそこに私がいるのを見て、軽く目を見開く。

「寝てていいって言ったのに」

私はテレビを消して拓真を振り返った。

「お帰りなさい。何か掛けるものを借りたいと思って待ってたの」

「掛けるもの?」

「やっぱり私、ここのソファで寝ようと思うの。拓真君がベッドで寝て?それで、毛布みたいなものを貸してもらえると助かるんだけど」

拓真の声が跳ね上がった。

「何言ってんの?碧ちゃんはベッドで寝て。俺がソファで寝るよ」

「拓真君にはどう見てもこのソファは狭いよ。本当は床で寝るつもりなんでしょ?いくらラグが敷いてあるとはいえ、そんなんじゃ冷えちゃうし、疲れだって取れないよ」

「そんなこと言ったら碧ちゃんだってそうだ。ソファじゃゆっくり眠れないって」

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