続きは甘く優しいキスで
「でも、私、居候の立場だから」

「居候の前に俺の彼女だろ。大切にしたいって思ってる人を、こんな所で寝かせられるわけがないじゃないか」

「だって……」

なおも言葉を探して食い下がろうとする私に、拓真はやれやれとでも言いたげにため息をついた。

「碧ちゃんて、こんなに頑固だったっけ?」

「頑固じゃなくて、真面目なの」

私は唇を尖らせて拓真を軽く睨んだ。

彼は苦笑を浮かべて、そんな私をしばらく眺めていた。けれど迷うように瞳を揺らしたかと思うと、次には決断するようにきっぱりとした口調で言った。

「分かった。そんなら一緒に寝よう」

「一緒に?」

私は動揺して、拓真の言葉をおうむ返しに繰り返した。最終的には折れてくれるだろうと思っていたのに、まさかそう言い出してくるとは思っていなかったのだ。

「俺たちは恋人同士。しかもよく考えたら夕べも一緒に寝てる。だったら今さら別々に寝る必要はないじゃないか。そうだ、そうしよう」

「そうしよう、って……」

確かに昨晩も彼と一緒のベッドで眠った。だけど今夜は……。

拓真は私の隣に腰を下ろすと、私の表情をうかがい見た。

「……本当は、俺のことも怖かったりする?」

「え?」

想像もしていない言葉だった。

驚いている私に、拓真は固い表情を見せる。

「昨夜は放っておけなくて一緒に寝たけど、実は男の傍は怖いのかな、と。あんなことされてたんだから、怖くないわけがないよね。だから俺、夕べのことを少し、いや、だいぶ反省してたんだ。強引だったな、って」

しかし、私は首を横に振って拓真の心配を否定した。

「嫌なら断ってたわ。それに、拓真君を怖いだなんて思ったことはないよ」

彼は私の本心を探るような目をする。

「本当に?」

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