続きは甘く優しいキスで
拓真が肘をついて体を起こした。

「ごめん、前言撤回させてほしい。やっぱりキスだけでもしたい」

「え……」

拓真は私の頬に手を伸ばした。

「だめ?」

拓真は返事を促すように、私の唇の上を指でなぞった。間接照明の灯りに照らし出されたその瞳が、熱っぽい光を帯びながら揺らめいているのを見て取り、私の胸は苦しいほどにドクンと高鳴った。

彼の瞳を見返したら、胸の内で渦巻いていた様々な気持ちがするりとこぼれそうになった。すべてが解決していないこの状況だけれど、私を彼女だと言ってくれている彼に、望んでもいいのだろうかと甘えたい気持ちが沸き起こった。私はどきどきしながら言葉をそっと舌に乗せた。

「……ほんとに、キスしてくれるの?」

「俺のことが恐くないのなら。いい?」

私は彼を見つめた。

「嬉しい」

私の言葉を聞いた途端、拓真は私の顔中についばむような優しいキスを次々と落とし始めた。目を閉じて彼の唇を感じながら、幸せな心地になった。

優しい――。

完全に例の問題が解決したわけではない。それでも、彼がキスを落として行くごとに、少なくともこれまでの嫌な記憶は消されていくような気がした。

「拓真君、大好き。ありがとう」

彼は私の目元に口づけて低く響く声で囁いた。

「俺も大好きだよ。愛してる。俺の所に戻ってきてくれて、心底嬉しいんだよ」

私は彼の胸元に手を伸ばし、恐る恐る言った。

「もっとキスしてほしいって言ったら、私のこと軽蔑する?」

「軽蔑?どうして?」
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