続きは甘く優しいキスで
私はその口づけを受けながら、彼の背に腕を回した。その時、太腿の辺りに固い感触を得てはっとした。それと同時に身じろぎして脚を動かしたと同時に、拓真が唇を離して呻くような声をもらした。

「だめ。頼むから動かないで」

「ご、ごめん……」

彼ははあっと息を吐き出した。

「万が一こういう流れになったとしても、今夜はこれ以上はしないって決めてたんだ。俺の部屋に来てって言ったのが、これ目的みたいに思われたくなかったからさ。これも試練の一つと思うことにしようって」

拓真は自分を戒めるように顔をしかめながら、私の隣に体を戻した。

「だから今度こそ寝るよ。碧ちゃんもほら、目を閉じて。おやすみ」

そう言って拓真は私と反対の方を向いて横になってしまった。

その背中を見て、私は寂しいと思った。我慢してほしくない。この先もほしい。拓真の愛し方で上書きしてほしい。彼に抱かれたい気持ちが心の深い所から次々と生まれてくる。高まるその気持ちを抑えきれなくなった私は、彼の背中に額をくっつけて彼を求める言葉を自ら口にした。

「お願い。拓真君に愛してほしいの」

その背中がぴくりと強張ったのが分かった。彼は振り向かないままくぐもった声で私に訊ねる。

「自分が今何を言ってるか、ちゃんと分かってる?」

私は拓真の背中に頬ずりした。

「分かってる。あぁ、でも……」

声が震える。

「もし私の体中にあるあざを見たら、そんな気も失せちゃうかな。やっぱりできないって……」

拓真が私の方を向く。

「言ったよね。俺は碧ちゃんっていう存在丸ごとを愛しているんだ、って。俺の気持ち、信じてくれないのか?」

「そうじゃないけど……。私の体、綺麗じゃないから……」
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