続きは甘く優しいキスで
拓真は優しく笑い、私の頬を撫でた。

「それは今だけだろ。そんな痕は消えていくだけだ」

「それはそうだけど……」

拓真は私の頬に一つ口づけると、私の意思を確かめるように改めてゆっくりと問う。

「……本当にいいの?怖くない?」

「拓真君のことは恐くないって言ったはずよ。それに、私のこと大事にしてくれるって言ったでしょ?だから、これまでの痕跡すべてが跡形もなく消えてなくなるくらい、あなたに愛されたい。癒してほしい。――こんなことを自分から言うような私は、いや?」

拓真がくすっと笑った。

「あの時俺から逃げた理由って、すごく初々しいものだったけど、今の碧ちゃんはもうすっかり大人の女性なんだな」

私は掛布団の中に顔を隠した。

「あの時のことは、もう、ほんとにごめんなさい……」

「蒸し返したいわけじゃなくてさ。なんというか、時の流れみたいなものを感じつつ、またこうやって君と一緒にいられることが不思議で嬉しいと言うか。その間の何年間かの方が実は夢だったんじゃないかと思えるくらい、あの時と今がつながった感じがしてる」

「なんだか難しいこと言ってる」

ふふっと笑う私に拓真は照れた顔をした。

「うん、自分でもうまく言えないんだよな。簡単に言うと、嬉しい。いやそれ以上だから、幸せってことか」

私は掛布団から目だけを出して、隣の拓真を見上げた。

「拓真君、あの時の続き、してくれる?」

拓真は艶やかな笑みを浮かべながら頷き、私のパジャマの胸元に手をかけた。

「俺が全部上書きしてあげる。君の心だけじゃなく体も全部、今度こそ俺だけのものにする。幸せ過ぎて仕方ないって思うくらい、君の心と体のすべてを愛して俺の腕の中で蕩かしてあげる」
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