続きは甘く優しいキスで
週明けの朝は、拓真が起きるより先にベッドを抜け出して、朝食を用意した。特に当番だとか係を決めていたわけではなかったけれど、できる時は率先して私が準備したいと思った。

身支度を終えてテーブルについた拓真は、満足そうに朝食をお腹に納めた後、真剣な顔をして言った。

「会社で何かされるなんてことはないと思うけど、くれぐれも気を付けるように。もちろん俺もできるだけ目を離さないようにはするけど、絶対に一人にならないようにしてくれよ」

「絶対にっていうのは……」

「難しいことはもちろん分かってる。だけど、少なくとも誰もいない場所で一人になったりしないで」

私は固い表情で頷く。

「うん、気を付けるから」

拓真は私の手を握りながら言った。

「できるだけ早く手を打つから」

「手?」

私は首を傾げた。出張から帰って来た後まっすぐにリッコへ行ったが、そこで皆と話していた頃にはもう、拓真の頭の中にはその「手」とやらがあるようだった。私に話さないということは、まだ明確になっていないからなのかもしれないと思い、あえて追及しない。

「とにかく、碧が今やるべきなのは、気を付けること一択。分かった?」

「分かってる。あ、後片付け……」

「俺がやるよ」

「じゃあ、お願いしようかな。私、そろそろ行くね。また会社でね」

「本当に気をつけて」

椅子から立ち上がった私を、拓真は心配そうな顔をしながら玄関まで見送りに出る。

時間差での出勤については、昨夜のうちに話し合って決めたことだった。

この話になった時、拓真ははじめ、太田の待ち伏せ対策として一緒に出勤すると言った。途中で会ったことにすれば、特におかしくはないだろうと言う。
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