続きは甘く優しいキスで
拓真の言葉に私は首を横に振った。それが毎日なのは怪しまれるかもしれない。また、二人で一緒にいる所を太田に目撃されてしまったら、かえって彼の神経を逆なですることになる可能性も考えられた。

だから時間差で――。

そう結論づけて、話を終わらせようとする私を拓真は止めた。そうだとしても、万が一を考えたら、一人でいる時間はできるだけ少ない方がいいのではないかと粘った。さらに、太田と付き合っていたことをこれまで周りに黙っていたのであれば、いっそのこと自分との交際をオープンにしてしまおうかとも言い出した。そうすれば、一緒に出勤してもおかしくはないだろうと付け加える。

私は反対した。

「それはやめた方がいいと思う。もしも私たちのことを知ったら、あの人きっと私にだけじゃなく、拓真君にまで何かひどいことをしてくるかもしれないもの。私、これ以上拓真君に迷惑をかけたくない」

「迷惑?例えばどんな?」

拓真に問われ、私は少し考えてから答えた。

「例えば、嫌がらせとか……」

彼は何度か目を瞬かせ、それからふわりと笑う。

「この前も、そうやって俺のことまで心配してくれてたね。ありがとう。だけど、俺のことは心配いらないよ。仮にあの人から何かさせたとしても、切り抜けられる自信がある。だから碧は、自分のことだけ心配していればいい。でもまぁ、確かに、彼は感情が激した時何をしでかすか分からない所があるみたいだし、ひとまずはあまり刺激しないようにした方がいいか。碧がまた傷つくことになるのも避けたいしな」
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