続きは甘く優しいキスで
「笹本さん、おはようございます」

「は、はい。おはようございます」

私の方は若干動揺していると言うのに、拓真はまったくの平常心だ。少なくともそう見えて、その役者ぶりにこっそり感心する。

「おはよう」

大槻が総務課の方へとやってきた。その後ろには田中がいる。「長」のつく二人だが、すでに出勤していたようだ。

その場にいた私たち三人は、立ち上がって挨拶した。

「おはようございます」

「おはよう。今週もよろしく」

大槻はにこやかな顔で言い、それから私と拓真を交互に見た。

「笹本さん、北川さん、先週は出張お疲れ様。支社長からお礼の電話があったことを伝えておきたくてね。笹本さんの指導が分かりやすくて良かったって、教えてもらった職員たち皆んなが口を揃えて言っていたそうだよ。結局、支社全体の事務指導になったみたいだね。お疲れ様。北川さんも支社長に同行して、色々と勉強になったんじゃないかな」

「はい、大変有意義な時間を用意して頂きありがとうございました」

拓真はかしこまった顔で答え、それから紙袋を大槻に見せた。

「こちらを管理部の皆さんに、笹本さんと選んで買ってきました。ちょっとしたものですが」

大槻が目を丸くした。

「仕事で行ったんだから、気を遣わなくて良かったのに。でもせっかくだ。有り難くいただきましょうか。笹本さん、後で管理部の皆んなに回してもらっていいかな?」

「はい、分かりました」

私が頷くのを見て、大槻は自分の席へと戻って行った。

そこへ課の他のメンバーたちも次々と出社してくる。
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