続きは甘く優しいキスで
朝の挨拶を交わし終えて、拓真はもう一つの紙袋からやや小ぶりの菓子箱を取り出した。

「課長、こちらは総務の皆さんに」

田中は目を見開いた。

「え、管理部とこっちと両方にわざわざ?」

補足するつもりで私は横から口を挟んだ。

「自分たちがいない分、総務の皆んなも忙しかっただろうから、と北川さんが……」

斉藤が感心したような声を上げた。

「おぉっ、さすが北川さん、気が利くなぁ」

拓真は照れたように笑った。

「入社以来皆さんにはお世話になっていますので、それも兼ねてなんですけどね。皆さんの好みが分からなかったので、選ぶのは笹本さんにお任せしましたけど」

「それなら、ありがたく頂戴するか。ありがとう。斉藤さん、これ、後で皆んなに回してもらえる?」

「了解です」

田中は菓子箱を斉藤に渡してから、改めてといった顔で、私と拓真をしげしげと見た。

「この出張で、ようやく二人は打ち解けたって感じがするね」

私は拓真と顔を見合わせた。

「いや、最初はなんだかぎこちないというか。今だから言うけど、君たち二人が出張なんて大丈夫かと思ってたんだよね。仲が悪いのかな、って思って見てたからさ」

そう見えていたとすれば、それには事情があったからだったが、意外と田中の目は侮れないなと今頃思う。私たちの今の関係にまで気づいていないことを祈りながら、私は拓真の反応が気になって彼にちらりと視線を飛ばした。

それが演技なのか、それとも本心なのかは分からなかったが、拓真はやや気まずそうに笑っている。田中に向かって軽く頭を下げた。
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