続きは甘く優しいキスで

21.同僚の心配

午前中は電話対応中心に業務をこなし、気づけばあっという間に昼休みの時間となっていた。

「田苗、お昼行かない?」

同僚に声をかけたが、彼女は申し訳ない顔を私に見せる。

「ごめん!今日はお弁当持参なんだ」

「へぇ、珍しいね。田苗がお弁当なんて」

「ちょっとね、今月厳しくって……。付き合えなくてごめん」

「大丈夫だよ。どうしようかな……」

昼時の食堂には、人がたくさんいるはずだ。それでもやっぱり、一人で行動するのは避けた方がいいような気がした。今朝の太田の目が気になって仕方がなかったのだ。ちなみに拓真は、十時を過ぎた頃から部長に伴われてどこかに行ってしまって、まだ戻ってきていない。仮に今ここにいたとしても、真っ先に声をかけるようなことはしないのだけど。とにかく、この昼休み、一緒に食堂に行ってくれる人はいないかと周りを見る。すると田中と目が合った。彼もいつも食堂を利用している。

「課長、お昼はこれからですか?良かったら、食堂、ご一緒しませんか?」

田中は申し訳なさそうに眉根を寄せた。

「悪い。今日は俺も弁当なんだ」

「愛妻弁当ですか?お幸せですね」

ふふっと笑う私に、田中は苦笑いを浮かべる。

「そんないいもんじゃないよ。子どもらが今日は弁当だからっていうんで、ついでだよ。ということで、付き合えなくて悪いけど」

「いえいえ、全然」

あとは今野と鈴木だが、今野は今日は電話当番、鈴木はすでに外に出て行ってしまった後で席にいない。わざわざ他の課や部署まで行って声をかけるのもどうかと思う。
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