続きは甘く優しいキスで

22.まさかの事態

来週末、各支社から事務の担当者たちを集めて、管理部主催の研修会が開かれることになっていた。新年度から導入する新たなシステムに関する内容が主だったが、せっかくの機会だからと、事務フローなどについての勉強会も併せて予定されている。ちなみに総務側の講師は今野が務める。彼にはその前の新システムの研修会にも参加してもらい、後日管理部の皆んなにフィードバックしてもらうことになっていた。

研修会の資料準備は総務課が担当する。それに加えて総務課としての資料の準備も必要で、手分けして作業を進めてはいたが通常業務もあるから、皆なかなかに忙しい。最終的な取りまとめは田苗、それをコピーして完成させるのは私、と仕事が割り当てられている。

そして今日になって、ようやく田苗の元にすべてのデータが集まった。あとはコピーをしてまとめるだけだ。

そんなわけで、私はコピー室にいた。

ここはオフィスと繋がった小部屋になっていて、コピー機二台と作業台などが置かれている。

コピー機は、動き始めて最初のうちは、順調に紙を吐き出していたのだが、残りあと数セットという所で紙詰まりを起こしてしまった。

「あと少しなのに。最近調子が悪いのよね……」

ぶつぶつと文句を言いながら、コピー機の引き出しの前にしゃがみこむ。手順に沿ってコピー機のあちこちを開け閉めしては中を確認する。白い紙の端が見えて手を伸ばした。

「なかなか取れないな……」

私は目の前に作業に集中していた。だから気づかなかった。自分の真後ろに太田が立ったことに。

「笹本」

その声に全身が緊張で強張った。

すぐそこには皆んながいる。大丈夫――。
< 188 / 222 >

この作品をシェア

pagetop