続きは甘く優しいキスで
それから数日後の午後、研修会が予定通り開催された。

本社の周辺県にある各支社から、代表して事務方が一人ずつと支社長またはその代理の社員が集まった。本社からは経理と総務の課長、それぞれの課の講師役がその研修会に参加することになっている。とは言え、希望があれば誰でも参加可能だった。ただその内容については、後日今野が説明してくれることになっていたから、少なくとも総務課からの希望者はいない。

システム関係の話が終わった頃合いになって、田中が戻って来た。席に着く前に拓真の傍で足を止め、声をかけている。

せっかくの機会だ、勉強会の方に参加をしたらどうか――。

そう言っているのが聞こえた。

拓真はちらと私を心配そうに見たが、参加することにしたようだ。筆記用具を手に席を立った。

彼が出て行ってから一時間ほど経過した。勉強会の内容は、経理から総務へもうバトンタッチした頃だろうか。

終わったら後片付けに行かないと――。

そんなことを考えながら、残りの仕事を片づけるべく取り組んでいたら、田中から声がかかった。

「笹本さん、悪いんだけど、これを資料室に戻してきてもらえないかな?」

見れば、田中の机の端にファイルボックスが三つほど置かれている。

「分かりました」

「悪いね」

「いえ」

手掛けていた作業がちょうど終わるところだった。

「じゃあ、これだけやってから……」

私は出来上がったデータをフォルダに保存する。周りの皆んなにひと言断りを入れて、椅子から立ち上がった。田中の机まで行き、ファイルボックスをまとめて抱え上げた。

「行ってきます」
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