続きは甘く優しいキスで
私の言葉の意味を確かめるように、太田は訊ねた。

「それは、完全にノーではないけど、イエスと言えるまでではないっていう意味?」

「そんな感じです。それに、私のどこを好きって言ってくれるのかな、って」

私はうつむき、太田の言葉を待つ。

すると彼は明るい声でこんなことを言い出した。

「それならしばらくの間、試しにつき合ってみるっていうのはどうだろう?期間は一か月くらい」

私は目を見開いて太田を見上げた。

「お試しって……。そんなの、ありなんですか?」

「ありだろ。その間、笹本には改めて俺を意識して見てもらってさ。そうしたら、イエスに気持ちが傾くかもしれないだろ?そもそも付き合うって、互いをよく知るためだと思うからお試しも何もないとは思うんだけど、笹本が迷っているなら、いったん期限をつけて付き合ってみたらどうかなって思うんだ」

そんな風に言われて、この時点ですぐに断るという選択肢は完全に消えた。

「お試し交際、いいかな?」

太田は答えを待つように私を見ている。

今の私にはそんな始め方が合っているのかもしれない――。

「分かりました。太田さんがそれでもいいと言ってくれるのなら……」

太田が嬉しそうに笑う。

「ありがとう。……さっき、俺に訊いたよね。笹本のどこが好きなのかって」

「えぇ」

「笹本のいい加減じゃない、まじめなとこ。好きだよ」

「ありがとうございます……」

面と向かって「好き」と言われたこともずいぶんと久しぶりだったから、照れてしまう。

もじもじしている私を見て、太田はくすっと笑った。
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