続きは甘く優しいキスで
大槻は腕を組んで太田を見た。

「理由はどうあれ暴力を振るうなど、とんでもない話だ。さらに、A社は我が社にとって重要な取引先。今回の件を見て見ぬふりというわけにはいかないな」

太田はがたがたと震え出した。

それを横目で見て俺は大槻に言った。

「この後専務と社長にも報告しますが、この件は懲戒解雇の方向で進むと思います。その時は諸々よろしくお願いします」

大槻は苦笑いを浮かべた。

「どうせもう決定事項なんだろう?社長たちに否と言わせないための証拠は、全て揃っているようだしな」

俺は太田を見下ろした。本来はこういうのは好きではないが、高圧的な態度を取る。

「念のために言っておくけれど、仮に今回の処分に納得がいかないからと言って、会社や俺を訴えようしても無駄だよ。就業規則上にも記載されている事項だしね。でもそれ以前になぜこうなったのか、自分の行いをじっくりと省みたらいい。それでも戦うというのならいつでも受けて立つ。ただし、君にとって不名誉なこの件がこれ以上周囲に晒されないように、一応は配慮して今こういう形で説明してあげている。それを覚えておいてほしい。それともう一つ。彼女は俺の婚約者になる人だ。今後また彼女に何かするようなことがあれば、今度は容赦なく対応させてもらうからそのつもりで」

「笹本のことはもう諦めます。だからどうか、解雇だけは……」

弱々しい声の太田に、大槻は厳しい顔を向ける。

「太田君、残念だよ。以前のトラブルをこちらでも把握できなかったとは言え、今回のようなことを仕出かしてしまったのでは、何ともしようがない。反省も自戒の念もなかったということになるからな。このまま帰りなさい。その後のことは追って連絡する」
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