続きは甘く優しいキスで

24.再会の先にあったもの

目を開けたそこに拓真の顔があって私は驚いた。診察後、ベッドの上に体を横にしてから、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。慌てて起き上がろうとしたのを、拓真の手が支えてくれた。

「ありがとう。寝ちゃってた……」

「安心して気が緩んだんだろう。あぁ、顔色もだいぶ戻ってきたみたいだね。頬も少しは腫れが引いたかな。唇、切れたところも大丈夫そうだね」

拓真はほっとした顔をして、私の頬を撫でる。

くすぐったくて思わず首をすくめると、カーテンの向こうから高階の声が聞こえてきた。

「他にも、肩につかまれたような痕や、後頭部にはぶつけた痕なんかもあったけど、どれもそんなにひどいものじゃなかったから安心していいわよ。診断書もできてるわ」

拓真はカーテンを開けて高階に礼を言う。

「色々とありがとう。絵未子さんがうちの医者で良かったよ」

絵未子は肩をすくめて笑う。

「それはどうも。ところで拓真君、当然笹本さんのことは送っていくんでしょうね」

「もちろんさ。碧、これ。田苗さんから持って来てもらった荷物」

そう言って拓真はバッグとコートを私に見せる。

「ありがとう。……やっぱり一度、課に顔を出そうかな」

「体調不良で早退って言ってあるし、課長もすでに事情を知ってる。だから今日は帰ろう」

部長だけでなく、課長もその事情をどこまで知ったのか気になった。今回の件は、言ってみれば「痴情のもつれ」というものだ。そう思うと彼らと顔を合わせるのはとても気まずい。

表情を曇らせた私に拓真は言う。

「理由はどうあれ碧は被害者なんだ。部長も課長も君のことをとても心配していた。そうだ。課長から伝言があるんだ。『週明けも何日か休んだって構わない』だってさ」
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