続きは甘く優しいキスで
拓真の部屋に着いて、ルームウェアに着替えてからリビングに出て行くと、すでに着替え終えた彼はお茶の準備をしていた。私の顔を見て訊ねる。

「今夜はピザ、頼んでもいい?」

「もちろんいいけど……。私、何か作ろうか?」

「いや、碧は大変な目に遭ったんだから、ゆっくりしていて。それに、今日は色んなことがあったしね。たまには楽しよう。話しておきたいこともたくさんあるから」

「話……。そうね」

私が医務室にいた間のことを聞かなければと思う。それだけではなく、いくつか心に引っ掛かっていることもある。それについても確かめたい。

「じゃあ、注文しましょうか」

私は携帯を手にしてピザのデリバリーのメニューを開いた。

注文を終えると、拓真が私をソファに促す。

「まずはひと息入れよう」

言いながら彼はお茶を淹れたティーカップをテーブルの上に並べる。それから私の隣に座り、そのうちの一つに手を伸ばした。

それに倣って私もティーカップを手にした。そっと口をつけてみると、程よい熱さ加減になっている。それが喉の奥に伝い落ちて行って、ようやくほっとした気分になった。

「あの後のことだけど」

拓真がティーカップをテーブルに戻す。

私もまたティーカップを置くと、背筋を伸ばして拓真を見た。じっと耳を傾ける。

「結論から言うと、彼は解雇ということになった。辞令は明日にでも出る。彼はもう明日からはうちの社員ではなくなる」

「そう、なのね……」

私は脚の上でギュッと両手を組み合わせた。

今回のことが原因で彼は解雇されたということか――。

みぞおちの辺りがぎゅっと苦しくなる。
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