続きは甘く優しいキスで
「確かに直接的な原因は、君に対して乱暴を働いたことだけど」

私の様子をちらりとうかがい、拓真は話を続けた。

「太田には反省している様子も、君に申し訳ないことをしたと詫びるような様子も見られなかった。自分は乱暴なんかしていない、偶々手が当たったりしただけだなんて、見え透いたようなことを言っていた。最後までシラを切り通すつもりでいたんだろうな。だけど今回のこと以外にも証拠は揃っていたから、こういう結果になったんだ。当然の流れだよ。彼への処分に対して、碧が責任を感じる必要はないからね」

「それはそうなんだけど……。やっぱりちょっとね」

太田からは色々とひどいことをされはしたけれど、こうなる前に、何か他の方法は本当になかったのだろうかと考えてしまった。それでも今後、少なくとも会社では太田の存在を気にする必要がなくなることに安堵してはいる。けれど、私と別れる意思についてはどうなのだろう。もしもまだ別れないと思っているとしたら、まだ完全には安心できない。

しかし拓真は私を安心させるように微笑んだ。

「大丈夫だ。彼は君を諦めると言った。あの様子を見る限りそれは本当だと思う。それに、万が一にも手出しはさせない」

「その言葉を信じないわけじゃないけど、どうしてそんな風に言い切れるの?」

「それは……。しいて言えば、君が本当の意味で、かつほぼ公に俺の恋人になったから、かな」

少しだけ言いにくそうな拓真を訝しく思う。

「『ほぼ公』ってどういう意味?」

私は眉間にしわを寄せながら拓真の顔をのぞき込んだ。
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