続きは甘く優しいキスで
拓真の肩が明らかにがくりと下がった。

「……そうだよな。でも、それだけ碧の存在は、俺にとって大きいってことなんだ。それは分かってほしい」

いつも自信満々でいるというわけではないけれど、私の反応を恐れるような拓真の姿を見るのは初めてかもしれない。そのことに気づいたら、胸の奥がくすぐったくなる思いがした。

拓真がおずおずと私を見る。

「今の話を聞いて、やっぱり俺と別れた方がいいかも、とか考えたりしてない?重すぎる、とか、俺が役員だから、とかの理由で」

こんな拓真は本当に珍しすぎる。そしてなんだかいつも以上に愛おしく感じる。私は彼の体に腕を回した。

「確かにちょっと、いえだいぶ重い気はするかな。だけど、私のことを愛してくれているのがすごくよく分かるし、大切にしてくれているのも分かっているから、別れたいなんて思っていないわ。ただ……」

私の言いたいことが何なのか察したのだろう。彼は私を抱き寄せて言った。

「今何を考えているか当ててみようか。きっと自分は俺に似つかわしくないんじゃないか、とか思っただろ?」

「え、と……」

目を伏せる私に彼は「やっぱり」ともらし、苦笑する。

「秘書室に誘われたことのある人が何を言ってるんだ、って思うけどね。なんにしても」

不安に揺れる瞳を私に向けながら、拓真は言う。

「俺は君を離したくないよ。この先の俺の人生の中、傍にいてほしいと思う人は碧以外には考えられないから。だけど、そう思っているのは俺だけなのかな?」

私は彼の手を取った。

「私も同じ気持ちよ」
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