続きは甘く優しいキスで
すると拓真は、私の手をさらに包み込むように自分の手を重ねて、その指先にきゅっと力を込めた。

「改めて言わせてほしい。――碧」

「は、はい」

急に真剣な声で名前を呼ばれてどきりとする。

「俺と正式につき合ってください」

「あ、あの。正式に、とはどういう意味で……?」

思わず聞き返したら、彼は不満そうな顔をした。

「結婚を前提に、ってことに決まってるじゃないか。というか、昔もこんな感じのやり取りをした覚えがあるんだけど……」

彼の言う『昔』のやり取りを思い出せず、私は首を傾げた。

「そうだったかしら?」

「忘れてるんならいいんだよ。それで返事は?ちなみに、『はい』以外の返事は受け付けないからね」

「受け付けない、って何それ」

私はふふっと笑った。拗ねたような拓真の言い方を可愛いと思ってしまう。そして嬉しい。私は全身でその気持ちを伝えたくて、彼にぎゅっと抱きついた。

「よろしくお願いします」

彼からほっとしたような息遣いが伝わって来た。

「それじゃあ今度、いや、明日にも指輪を見に行こう」

「うん」

数年ぶりの再会がこんな幸せなものになるなんてと、不思議な気分になる。

「あのね、拓真君。本当にありがとう。私、一人でなんとかできると思ってたけど、結局は最後まで拓真君に助けてもらってばかりだったね。感謝してる」

「だってそれは……」

拓真の声が頭の上で響く。

「俺にとっては当然のことだったから」

「それでも、ありがとう」

私は彼の胸に顔を埋め、それからふと思い出す。
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