続きは甘く優しいキスで
私は自嘲気味に笑った。

「いい大人が何を言ってるんだ、って感じですよね」

梨都子は私の肩にぽんと手を乗せて、さらに私の耳に顔を寄せると、声を潜めて言った。

「結論から言うと、自然の流れに任せなさい、かな。大丈夫よ、なんとかなるもんだって。というか、怖いとか不安に思ってることを、彼に正直に言ってみたらいいんじゃないかな。彼が碧ちゃんを大事に思っているんなら、ちゃんと話を聞いてくれて、嫌がることはしないはずでしょ?」

「そう、なのかな……」

「そうよ。それに、碧ちゃんがいいって思った時がその時だと思うよ。無理する必要なんてないよ」

「そっか。そうですよね……」

自分に言い聞かせるように私はつぶやく。

梨都子は私のグラスに氷を足しながら頰を緩めて、にこっと笑った。

「いいなぁ、付き合いたてかぁ。久々に会ったんだから、惚気話の一つも聞かないと今日は帰れないわ。碧ちゃんに彼氏ができるの、お姉さんは楽しみにしていたんだからね」

女同士の話が終わったことを察知して、清水が会話に入って来た。

「俺にも聞かせてよ。碧ちゃんがつき合う男ってどんなやつなのか、ちょっと興味あるわ」

清水も来ていることが分かった時点で、色々と聞かれることは覚悟したものの、実際に二人に挟み込まれて私はたじろぐ。

「たまには人の恋バナを聞いて、刺激をもらわないとね。――それで、その彼氏、どんな人?」

梨都子が目を輝かせながら、私の方にずいっと身を乗り出した。
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