続きは甘く優しいキスで
店には思った以上に長居してしまった。気の置けない友人たちと久しぶりに過ごす時間は楽しかった。

そろそろ帰ろうかと身支度を始めていると、それに気がついた清水が一緒にタクシーに乗って行くと言う。

「清水さん的にはまだ早い時間じゃないんですか?」

からかう私に、清水は苦笑してみせる。

「実は昨日も飲み会だったんだ。だから、今日はこの辺でやめておこうと思ってさ」

「そうだったんですね。それならもっと早い時間に切り上げれば良かったのに」

「だって碧ちゃんの恋バナだよ?聞かないわけにはいかないと思ってさ」

そう言って清水はにっと笑う。

私は照れ臭くなって彼から視線を外し、目を泳がせた。

「からかうのはこれくらいにして、帰るとしようか。梨都子さん、ごちそうさまでした」

清水が梨都子に頭を下げるのを見て、私も慌てて礼を言う。

「どういたしまして」

梨都子はにこっと笑う。

「碧ちゃん、何かあったら遠慮なく相談してよね。それでまた恋バナきかせて。それとね……」

梨都子は池上と顔を見合わせてからこう言った。

「彼氏ができてそっち優先なのは分かるんだけど、できればまた前みたいに顔を見せてくれたら嬉しいな」

そう言えば――。

思い返せば太田と付き合い出してから、ここに顔を出したのはこの夜が初めてだった。彼が私と二人で過ごしたがることもあって、リッコに限らず、他の友人たちとの付き合いも後回しになってしまっている。もうそろそろ、また以前のように自分の友人たちともちょくちょく会いたいと思う。太田さえ良ければ、時には私の友人たちと一緒に飲んだりするのも楽しいかもしれない。そんなことを想像しながら、私は梨都子の言葉に大きく頷いた。
< 27 / 222 >

この作品をシェア

pagetop