続きは甘く優しいキスで
店を出た私と清水は、まっすぐにタクシー乗り場へと足を向けた。平日の夜ということもあってか、乗り場にたどり着く前にタクシーを拾うことができた。後部座席に腰を落ち着けた私たちは、各自行く先を告げる。タクシーはすぐに走り出した。

タクシーに揺られ始めて間もなく、清水がためらいがちに口を開いた。

「あのさ。碧ちゃんの彼って、もしかしてヤキモキ焼きかなんか?」

突然の問いかけに私は目を瞬かせた。付き合い始めてからこれまで、特にそんな風に感じたことはない。

そう答える私に、清水は考え込むように腕を組んだ。口調軽く言う。

「話を聞いてて、ちょっとね。ずいぶんとマメっていうか、過保護っていうか」

私は小首を傾げて清水を見た。

「これくらいは、特に問題ないと思ってますけど」

「まぁ、碧ちゃんがそう言うならいいんだけど……。彼の碧ちゃんにべったりな感じが、なんかねぇ。碧ちゃんのことがよっぽど好きなんだろうなって思うけど、俺にはちょっと束縛気味に見えてしまうっていうか。友達との約束よりも自分を優先してほしいとか言うんだっけ?気持ちは分からないでもないけど、そういうの、めんどくさいってならない?それでここしばらくは、友達とも会ってなかったんだろ?リッコもだいぶ久々だったし。職場、一緒なんだよね。帰り、碧ちゃんが残業で遅くなる時は待っていてくれたりするんだっけ?連絡も毎日必ず、だっけ?すごいよなぁ。そんなにいつも一緒にいて、息、詰まらないのかな、って人ごとながらちょっと心配になるよ」

「うぅん……」

私は唸りながら首を傾げた。

「でも、付き合っていたら、こういうものじゃないんですか?」
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