続きは甘く優しいキスで
「そうでしたか。お疲れ様でした」

笑い返す私に太田はまぶしそうな目を向けた。

「何が食べたい?」

「そうですねぇ。どちらかと言えば、今日は和食の気分かな」

「じゃあ、俺の知ってる店でもいいかな?」

「はい。もちろんです」

私が頷くのを見て、太田はゆっくりと歩き出した。

「ここからそんなに遠くないんだ。もしかしたら、笹本も知ってるかもな」

「この辺のお店ですか?どこだろう」

私は首を傾げつつ太田の後を着いて行った。

彼の言葉通り、店は会社から近い場所にあってものの数分で到着した。

太田が足を止めて振り返る。

「ここなんだけど、知ってた?」

「いえ、初めて知りました」

「居酒屋なんだけど、ここの食べ物がおいしいんだ」

「そうなんですね。太田さん、詳しいんですね」

「そういうわけでもないけど……」

太田は照れたように笑った。

「……じゃあ、ここでいい?」

「はい、構いません。その美味しいご飯、食べてみたいです」

平日だったから、私はノンアルコールビールを頼んで主に食事を楽しんだが、太田は焼酎の水割りを二杯ほど口にした。

店を出た私たちは近くのタクシー乗り場まで行き、ちょうど待機中だったタクシーに一緒に乗った。帰る方向が同じであることは、私が経理課だった時から互いに知っている。

タクシーが走り出して間もなく、突然太田が言った。

「……俺さ、笹本のこと好きなんだよな。俺と付き合わないか?」
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