続きは甘く優しいキスで
「笹本が俺以外の男に行ってしまうんじゃないかって、不安になってしまった。その気持ちでいっぱいになってしまって、手加減できなかったんだよ」 

「そんなこと……」

清水のことを言っているのだと思った。彼との関係を説明したのに、実は納得しておらず、だから狂おしいような激しさで私を抱いたのかと思うと複雑な心境になった。やきもちを妬いてくれるのは嬉しい。けれどまたこんなことがあったら、と脳裏に不安がよぎる。今夜のように嫉妬心を露わにして、私を抱くことがあるのではないかと思うと恐ろしくなる。

「……今度からは、優しくする。だから許してくれ。今夜はごめんな。愛してるんだ。信じて」

太田はそう言って私をぎゅっと抱き締めた。

本当はこれが、今まで私が見てきた優しい彼の姿だったはず。今後もまた肌を重ね合わせることがあったとしても、今夜のような抱き方をすることはもうないに違いない。彼は今、そう言って謝ってくれたじゃないか。きっとこれは今夜だけのことなのだ。嫉妬深くなるほど彼は私を愛してくれているんだ。

私は自分にそう言い聞かせ、揺れる心をなだめた。

その後も何度か太田と体を重ねることがあったが、彼はあの夜のように激しく私を抱くことはなかった。

それなのに、優しく抱かれていてもどこか私の頭の片隅は冷めていて、気づけばいつも、この行為の終わりを待っていた。彼のことは好きなはずのにどうして、と理由を考えた。そうしてたどり着くのは、初めて彼に抱かれた夜のことだった。その記憶は簡単には消えてくれない。そのために、太田に対して心も体も許せなくなっているのではないかと思った。
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