続きは甘く優しいキスで
「確かにあの頃と見た目や雰囲気は変わったかもしれないけど、俺に分からないはずがない。君は、俺の彼女だった碧ちゃんだろう?」

その声はかすれて聞こえ、そこに今どんな感情が込められているのか判断がつけられなかった。

「違います」

なおも言い張る私に、北川は悲しそうな顔をした。

「俺のこと、覚えていないの?」

「覚えていないも何も……」

あなたの勘違いだから――。

そう続けようとした時、彼は手を伸ばして私の頬にそっと触れた。

「なっ……」

私は驚いて顔を背けた。鼓動がうるさいくらいに鳴り出した。一瞬目に入った彼の目があまりにも優しく見えて、頭の中が混乱する。

あの時のことを怒っているのではないの――?

私は恐る恐る北川を見上げた。

「やっと目が合った」

彼がほっとしたように微笑んだ。

「俺のこと、知らないふりをしようとしていたことには気づいていたよ。そんなに俺に会いたくなかった?もしもその理由が、俺の思っている通りのものだという前提で、今ここで言っておこうと思う。俺はあの時のことを怒ってはいないし、碧ちゃんを責めようとも思っていない。むしろ、できることならもう一度会いたいと思っていた」

北川の目は穏やかだった。

「あの時急に会ってくれなくなったのは、俺が何か、君を傷つけるようなことをしてしまったからなんだろう?君にとっては過去のことで今さらな話だと思うけど、できることならその理由を聞かせてほしいんだ。そうすれば、俺も前に進める」

知らないふりをすると決めたはずだったのに、私は北川の言葉に反応してしまった。

「前に……?」
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