続きは甘く優しいキスで
大槻が自分の席に戻って行ったのを見届けてから、田中が私たち総務の面々に向けて言った。

「皆んな聞いていたと思うけど、そういうことで。いつものように笹本さんメインで部長の仕事をやってもらうけど、何かあったら笹本さんのフォロー、皆んなでよろしく」

私は同僚たちが頷くのを見て笑顔で頭を下げると、早速大槻の仕事に取りかかった。

こうして午前中いっぱいと昼休憩を挟んだ後からもずっと、私は依頼された資料作りに取り組んでいた。時折電話を取りながらだったが、順調だ。ちょうどきりがいいところで、何気なくパソコン画面の時刻を見た時、隣から田苗が声をかけてよこした。

「笹本、コーヒーでも飲まない?私、休憩しようかと思うんだけど」

私は首のコリを解すように左右に軽く動かしながら言う。

「もう三時すぎたんだね。私、淹れて来るよ。座りっぱなしだったから、少し動きたい。他にもコーヒーほしい人はいますか?」

一応課の他の者たちにも声をかける。結局全員が飲みたいと言う。

「一緒に行くよ」

田苗が言ってくれたのを私は笑って断った。

「大丈夫。ただ、粉を入れるだけだし、トレイに乗せて戻って来るから」

「そう?悪いなぁ」

「どういたしまして。その代わり、電話とかよろしく」

「分かった」

「それじゃあ、ちょっと席を外します」

田中に断りを入れてから、私は全員分のマグカップを両手に持って給湯室に向かった。

給湯室は廊下の突き当りを少し入った所にある。そんなに頻繁に人が出入りする場所ではないから、普段は消灯されていた。

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