続きは甘く優しいキスで
「いい大人なんだ。そんなこと、気にかけてやる必要なんかないだろ。今朝だってあいつに笑いかけてたけど、いつの間にかもうあんなに打ち解けた雰囲気になってるってのが気に食わない。……とにかく」

太田はわざと息を吹きかけるようにして、耳元で囁いた。

「前にも言ったと思うけど、俺以外の男をあんな目で見るのは許さないからな」

太田の腕に力が込められて苦しい。

「離して。苦しい……」

「あいつに見せてる笹本の表情が全部無意識のことだとしたら、余計に許せない。なぁ、頼むから俺を不安にさせないでくれよ。今夜行くから、俺の気のせいだった思わせてくれ」

「待って……。今夜は友達と食事に行く約束があるって、私、言ったはずですよね」

しかし太田はさらりと言った。

「そんなのキャンセルしろよ」

「そんなわけにはいかないわ」

「だったら、帰りは迎えに行くよ。何時頃に終わるんだ?」

太田は腕を解き、私の髪を指に巻きつけながら言う。

「はっきりとは分からない……。それに自分で帰れるから大丈夫です」

「俺が迎えに行ったら何かまずいことがあるわけ?」

太田は私の顔をのぞきこむ。

「その友達って、男じゃないだろうな」

「女の子よ。大学時代からの」

「それなら、俺が迎えに行っても全然問題ないよな?店とだいたいの時間、あとでメールしておいて。分かった?」

太田は低い声で囁くと、私のブラウスの襟をぐいっと開き、首筋を強く吸った。

「っ……」

「念のための虫よけな」

太田は満足そうな顔をして、ようやく私を解放した。

「俺、やっぱ、コーヒーはいいや。じゃあな。連絡、忘れるなよ」

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