続きは甘く優しいキスで
9.回想(前)
元カレである北川は、私の初めての恋人だった。大学一年生の夏休み、ある出来事をきっかけに、彼と付き合い出すようになった。
その頃の私は先輩の紹介で、印刷会社のデザイン室でアルバイトをしていた。内容は大半が雑務で、時にはちょっとしたチラシのモデルをやったりと、社員の皆んなには申し訳ないけれど、気楽に働いていたものだった。
そんなある日のこと、アルバイト先に出入りしているフリーカメラマン、須藤さおりからあるお願いをされた。それは、被写体になってくれないかというものだった。聞けば地元の神社でお祭りがあって、その写真を撮る予定でいるのだが、モデルをやってくれるような人を探しているのだと言う。さおりは通常の仕事以外にも写真素材の提供もしていて、そのための撮影らしかった。
アルバイト代は出せない代わりに、ご飯ごちそうするからお願い――。
その言葉につられたわけではなかったけれど、特に予定もなかったし、普段から私を可愛がってくれているさおりからのお願いだ。断る理由もないから私は二つ返事で引き受けた。
浴衣姿で取りたいから、その日は浴衣を着て来てね――。
そう言われたから、約束の日、実家から持ってきていた浴衣を身に着けた。髪は自分でそれっぽく結い上げ、履きなれない下駄を履いて、バスに乗って神社までやってきた。
そう言えば、北川さんにも声をかけたって言ってたな――。
さおりの言葉を思い出して、どきどきする。
その頃の私は先輩の紹介で、印刷会社のデザイン室でアルバイトをしていた。内容は大半が雑務で、時にはちょっとしたチラシのモデルをやったりと、社員の皆んなには申し訳ないけれど、気楽に働いていたものだった。
そんなある日のこと、アルバイト先に出入りしているフリーカメラマン、須藤さおりからあるお願いをされた。それは、被写体になってくれないかというものだった。聞けば地元の神社でお祭りがあって、その写真を撮る予定でいるのだが、モデルをやってくれるような人を探しているのだと言う。さおりは通常の仕事以外にも写真素材の提供もしていて、そのための撮影らしかった。
アルバイト代は出せない代わりに、ご飯ごちそうするからお願い――。
その言葉につられたわけではなかったけれど、特に予定もなかったし、普段から私を可愛がってくれているさおりからのお願いだ。断る理由もないから私は二つ返事で引き受けた。
浴衣姿で取りたいから、その日は浴衣を着て来てね――。
そう言われたから、約束の日、実家から持ってきていた浴衣を身に着けた。髪は自分でそれっぽく結い上げ、履きなれない下駄を履いて、バスに乗って神社までやってきた。
そう言えば、北川さんにも声をかけたって言ってたな――。
さおりの言葉を思い出して、どきどきする。